当院(産婦人科)の無痛分娩について

当院(産婦人科)の無痛分娩について

出産時の痛みを和らげるためのサポート体制

 キッコーマン総合病院では、お産の痛みを和らげ、リラックスして出産に臨めるよう「無痛分娩(硬膜外麻酔)」と「和痛分娩(IV-PCA)」の2つの方法を提供しています。夜間や休日を含め、お母さんのご希望やお産の進行状況に応じたサポートを行います。


1.痛みをコントロールする2つの方法

①硬膜外麻酔による「無痛分娩」(計画分娩

 背中(腰)から極細の管(カテーテル)を入れ、そこから麻酔薬を注入して下半身の痛みを和らげる標準的な方法です。

  • ご自身で鎮痛を調整:痛くなってきたかな?と感じたらご自身でボタンを押し、麻酔薬を追加できます。使いすぎを防止するロック機能(15分間隔)により過量投与を防ぐ仕組みとなっています。
  • メリット:痛みが減ることで体力の消耗を抑えられます。血圧の上昇を防ぐ効果もあります。
  • 計画分娩が基本:あらかじめ入院日を決めて行うため、医療スタッフが最も充実している時間帯に対応します。


②点滴による「和痛分娩(IV-PCA)」

 夜間や休日などで急に陣痛が始まり、すぐに硬膜外麻酔が開始できない時間帯や、体質的に硬膜外麻酔ができない方に対応する鎮痛方法です。朝まで痛みを我慢してパニックになることを防ぎ、安全にお産をつなぐための手段として導入しています。

  • 「眠気」で痛みを和らげる:痛みを完全にとるのではなく、点滴のお薬によって「ウトウトと眠気を誘う」ことで陣痛の辛さを和らげます(和痛)。
  • ご自身でボタンを押す仕組み:こちらもご自身でボタンを押してお薬を追加できます。
  • 無痛分娩への切り替え:夜間を点滴の和痛分娩で乗り切り、日中になって体制が整い次第、背中からの硬膜外麻酔(無痛分娩)へスムーズに切り替えることも可能です。

【当院の和痛分娩(IV-PCA)の安全性について】
 当院の和痛分娩は、お母さんと赤ちゃんの安全を最優先した海外でも広く用いられている方法です。
  • 安全性の高いお薬のみを使用:かつて赤ちゃんの呼吸が弱くなる原因とされた古いお薬(ペチジンなど)は一切使用しません。体から抜けるのが早く、安全性に配慮した薬剤を使用しています。
  • 過量投与を防ぐ3つの安全機能:お薬が持続的に流れ続けることはなく、1回ボタンを押すと10分間は追加できないロック機能がついています。また、お産が最終段階(子宮口全開大)に入った時点で投与をストップし、赤ちゃんへのお薬の移行を最小限に抑えます。
  • 緊急帝王切開率が「半減」:慶應大学病院の研究(Miyakoshi et al., J Obstet Gynaecol Res. 2013)により、)により、赤ちゃんの元気さは自然分娩と変わらないことが証明されています。さらに、痛みのストレスが和らぐことで、一部の報告では母体への負担軽減に関する有用性が示されています。 
  • 母乳育児もすぐに開始可能:母乳へ移行するお薬の量は0.05%未満とごく微量です。出産後の母乳育児への影響は少ないとされています。

2. 実際の無痛分娩(計画分娩)のスケジュール・流れ


実際のお産がどのように進むのか、具体的な流れをご説明します。

【事前の準備】

無痛分娩をご希望の方は、お早めに医師へお申し出ください(1日の枠に限りがあるため先着順となります)。
仮の入院日を計画します。

  • 妊娠36:同意書を用いて、処置の説明を行います。入院日を決定します。 
  • 妊娠3738:入院前最後の外来で、内診を行い、子宮口を柔らかくする漢方薬を処方しますので、指示された日程で内服してください。


【入院1日目:事前の処置】
  • 13:30:ご入院。シャワーを浴び、分娩着に着替えてモニター検査を行います。 
  • 15:00〜16:00ごろ:分娩室へ移動し、背中のお注射(硬膜外カテーテルの挿入)を行います。

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  1. 1ベッドの上で横向きになり、おへそをのぞき込むように背中を丸めます(エビのポーズ)。
  2. 2背中を消毒し、まず痛み止めの局所麻酔を打ちます。
  3. 3麻酔が効いたところで細い針を刺し、髪の毛ほどの細い柔らかい管(カテーテル)を神経一歩手前の隙間に入れます。
  4. 4針だけを抜き、管をテープで背中にしっかり固定します。
  5. 5お薬が正しく効くかテストを行い、冷たい保冷剤などを当てて効き目(冷たさを感じにくくなっているか)を確認します。
  6. 6子宮口の開きが不十分な場合は、出口を広げるための小さな風船(ミニメトロ)を入れる処置をします。
  • 16:30ごろ:車椅子でお部屋に戻り、安静にします。この日の夕食は通常通りお召し上がりいただけます。 


【入院2日目以降:いよいよご出産へ】

  • 5:00ごろ〜:陣痛を起こすお薬(飲み薬または点滴)を開始します。朝食は普通にお召し上がりいただけます。
  • 日中(陣痛が強くなってきたら):子宮口が35cmほど開き、5分間隔の強い陣痛が来たタイミング(これらを満たさなくても、ご自身が痛いと感じて希望されたタイミング)で、背中の管から痛み止めのお薬の投与を開始します。
○これ以降は、安全のためお食事は禁止となります。ただし、お水、お茶、スポーツドリンク、果肉のないゼリー飲料、飴などは自由にお召し上がりいただけます。
○痛みが来たら、ご自身でボタンを押してお薬を追加しながら過ごします。どうしても痛みが強くて取り切れない場合は、スタッフが「レスキュー」と呼ばれる追加のお薬を直接注入して痛みを抑えますので、我慢せずにお伝えください。
  • 子宮口が全開大になったら:赤ちゃんを押し出すため、陣痛の波に合わせて「いきみ」をかけます。助産師がタイミングをコーチしますので一緒にがんばりましょう!
  • ご出産!:出産後の縫合処置などの際も、背中の管からお薬を入れるため痛みを抑えられます。背中の管は、当日夕方または翌朝に抜きます。

3. 知っておいていただきたい注意点(副作用とリスク)


安全に受けていただくため、以下の点をご理解ください。

  • お産が長引く・器械分娩の可能性:麻酔により陣痛やいきむ力が弱まるため、お産が長引くケースが多くなります。また、吸引分娩や鉗子分娩(器械でお産を助ける方法)になる確率が通常の分娩より少し高くなります。 
  • 硬膜外麻酔の副作用:足に力が入りにくくなる、血圧低下、尿意を感じにくい、かゆみ、体温上昇などが起こることがありますが、一時的なものであり、麻酔が切れれば自然に回復します。
  • 和痛分娩(IV-PCA)の副作用:吐き気を感じやすいため、適宜吐き気止めを使用します。また、お薬の影響で呼吸がゆっくりになることがあるため、酸素濃度を常に機械で監視します。
  • まれな合併症:硬膜外麻酔では、約100人に1人の割合で処置後に頭痛(硬膜穿刺後頭痛)が起こることがあります。また、非常にまれですが、麻酔薬が血管に入ってしまうこと(局所麻酔中毒)や、脊髄の奥に入ってしまうこと(全脊髄クモ膜下麻酔)などのリスクがあります。当院では常にモニターで母子の状態を監視し、早期発見・迅速な対応ができる体制を整えています。

4. 費用について


通常の分娩費用に加えて、以下の費用(自費診療)が追加となります。

  • 事前に無痛分娩を予約された場合:一律 12万円 
  • 予約無しで分娩途中に無痛分娩へ切り替えた場合:通常の追加費用に加え、さらに 3万円追加(合計15万円)
  • 分娩進行が早く、和痛分娩(点滴)のみでご出産された場合:事前の予約の有無にかかわらず、一律 6万円
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