肩の痛み・動かしにくさでお困りの方へ
リバース型人工肩関節全置換術(RSA)とは
リバース型人工肩関節全置換術(RSA)は、通常の肩関節とはボールと受け皿の位置を逆にした人工関節です。通常の肩関節では、上腕骨側がボール、肩甲骨側が受け皿の形をしています。
RSAでは、肩甲骨側にボールを設置し、上腕骨側に受け皿を設置します。この構造により、腱板が十分に働かない場合でも、三角筋の力を利用して腕を上げやすくすることができます。
RSAが適応となる主な疾患
- 腱板断裂性肩関節症
- 修復困難な広範囲腱板断裂
- 腱板機能が破綻した変形性肩関節症
- 人工肩関節手術後の再手術が必要な症例
- 高齢者の一部の上腕骨近位端骨折
- その他、通常型人工肩関節では十分な機能改善が難しい肩関節疾患
RSAは、すべての肩の痛みに対して行う手術ではありません。年齢、骨の状態、腱板の状態、三角筋の機能、生活で困っている内容を総合的に判断して適応を決めます。
RSAの特徴
RSAの大きな特徴は、腱板が機能しにくい状態でも、三角筋の力を利用して腕を上げることを目指せる点です。期待される効果としては、以下があります。
- 肩の痛みの軽減
- 夜間痛の改善
- 腕を上げる動作の改善
- 食事、更衣、洗髪など日常生活動作の改善
一方で、RSAにも脱臼、感染、ゆるみ、骨折、神経障害などの合併症の可能性があります。また、正常な肩とまったく同じ状態に戻るわけではありません。特に、背中に手を回す動作や力仕事には制限が残ることがあります。
そのため、手術前には画像検査を行い、患者さんの生活背景や希望を伺ったうえで、手術によって期待できること、注意すべきことを丁寧に説明します。
~術前画像~
「腱板断裂性肩関節症により、上腕骨頭が上方へ移動し、関節の変形を認めます。」

~術後画像~
「リバース型人工肩関節全置換術により、肩甲骨側にボール、上腕骨側に受け皿を設置しています。」

手術を検討するタイミング
肩の痛みがあっても、すぐに手術が必要になるわけではありません。多くの場合、まずは薬物療法、注射、リハビリテーションなどの保存治療を行います。しかし、以下のような場合には、人工肩関節手術を検討することがあります。
- 痛みが長く続いている
- 夜間痛で眠れない
- 注射やリハビリを続けても改善しない
- 腕が上がらず日常生活に困っている
- 洗髪、着替え、食事、家事がつらい
- 趣味や仕事に支障がある
- レントゲンやMRIで関節の変形や腱板断裂が進行している
手術を行うかどうかは、画像だけで決めるものではありません。
「何に困っているのか」「どの動作を改善したいのか」「どの程度の活動を希望されるのか」を一緒に確認しながら、治療方針を決めていきます。
術後のリハビリテーションについて
人工肩関節手術では、手術そのものだけでなく、術後のリハビリテーションも重要です。術後しばらくは装具や三角巾で肩を保護し、その後、時期に応じて少しずつ肩の動きを回復させていきます。リハビリの進め方は、TSAとRSAで異なる部分があります。
TSA術後
TSAでは腱板の働きが重要なため、術後は腱板や周囲組織の修復状態に注意しながらリハビリを進めます。
RSA術後
RSAでは三角筋を利用して肩を動かすため、術後は脱臼を避けながら、三角筋や肩甲骨周囲の機能を整えていきます。
当院では、医師とリハビリスタッフが連携し、患者さんの状態に合わせて段階的にリハビリを行います。
当院での診療の特徴
キッコーマン総合病院 整形外科では、肩関節疾患を専門とする医師が、肩の痛みや機能障害に対して診療を行っています。
1.肩専門の視点で診断します
TSAでは腱板の働きが重要なため、術後は腱板や周囲組織の修復状態に注意しながらリハビリを進めます。
2.保存治療から手術まで対応します
手術ありきではなく、まずは患者さんの症状や生活状況に合わせて、薬物療法、注射、リハビリテーションなどを検討します。保存治療で十分な改善が得られない場合には、手術治療についてもわかりやすく説明します。
3.患者さんの生活目標を大切にします
「夜眠れるようになりたい」
「洗髪や着替えを楽にしたい」
「家事を続けたい」
「趣味をもう一度楽しみたい」
患者さんによって、治療で目指すゴールは異なります。診察では、痛みの程度だけでなく、生活の中で何に困っているのかを大切にしています。
このような症状がある方はご相談ください
- 肩の痛みが数か月以上続いている
- 夜間痛で眠れない
- 腕が上がらない
- 反対の手で支えないと腕が上がらない
- 肩を動かすとゴリゴリ音がする
- 注射やリハビリをしても改善しない
- 腱板断裂と診断されたことがある
- 変形性肩関節症と言われたことがある
- 人工肩関節手術について相談したい
- 他院で手術を勧められたが、もう少し詳しく説明を聞きたい
肩の痛みや動かしにくさは、生活の質に大きく影響します。「この程度で受診してよいのだろうか」と迷われる方もいらっしゃいますが、早めに原因を確認することで、治療の選択肢が広がることがあります。
受診をご希望の方へ
肩の痛み、腕が上がらない、人工肩関節手術について相談したい方は、キッコーマン総合病院 整形外科へご相談ください。
診察では、症状の経過、生活で困っている動作、これまでの治療内容を伺い、必要に応じてレントゲン、MRI、CTなどの検査を行います。検査結果をもとに、現在の肩の状態と治療の選択肢について、できるだけわかりやすくご説明します。
肩の痛みを我慢し続ける前に、一度専門的な評価を受けてみませんか。
## 注意事項
本ページは、変形性肩関節症、腱板断裂性肩関節症、人工肩関節手術について一般的な情報を提供するものです。実際の治療方針は、患者さんの年齢、症状、画像所見、全身状態、生活背景によって異なります。詳しくは診察時に医師へご相談ください。
当院医師の経歴紹介
キッコーマン総合病院
整形外科部長
大西 信三 医師
2026年4月当院へ赴任
国内・フランスへの留学にて肩関節の知見・手術手技を身につけ、筑波大学附属病院整形外科において13年にわたり肩関節分野のチーフを務める。ハンドボールの各カテゴリー代表ドクターを歴任、ハンドボール男子代表のドクターとしてパリオリンピックへ参加。スポーツ整形外科にも明るい。
当院着任までに肩関節関連手術執刀約2000件(関節鏡下腱板断裂1100件、解剖学的・リバース型人工肩関節350件、反復性脱臼300件、その他肩鎖関節脱臼など250件)と豊富な経験を有する。2025年度肩関節執刀件数は215件。
当院では大西医師の後任として筑波大学附属病院整形外科の肩関節分野チーフに着任した池田和大医師も非常勤医師として診療にあたっております。肩関節の痛みでお困りの患者様は受診をご検討ください。
当院対応肩関連疾患はこちら
- 肩腱板断裂
- 変形性肩関節症
- 腱板断裂性肩関節症
- 反復性肩関節脱臼
- 肩鎖関節脱臼
- 胸郭出口症候群
- 凍結肩(肩関節周囲炎:五十肩)